取引の仕組みは何となく分かってきたけれど、実は根本的なことが分かっていないのかも…という人のために、補足です。
いわゆる市場価格がどうやって決まっているのか、ですが、意外に分かるようで分かっていなかったりするのです。
ですので、ここで、根本的なことについて念のため説明しておきたいと思います。
値段はもちろん、毎日変わります。一番勘違いで多いのが、日々、値段がつながっていると思っている人が意外といる、ということです。
例えば、3000円の金が買いたい人が多くて3010円まで上がってその日の取引が終わった、としたら、次の日は3010円から始まる、と思ってる人が意外といます。
これは、間違いです。
例えば、金の値段は、世界中で取引されており、特に世界で一番大きい市場であるNY市場の値段を元に動きます。株がNYダウに連動して東京市場も動いたりするのと一緒です。
また、輸入商品ですので、為替も関係します。
つまり、前日が3010円で終わっても、翌日NY市場の金価格が上がっていて、為替が円安していれば、翌日の価格は3050円から始まる、ということもあり得ますし、急激な変動であれば、翌日、ストップ高、ストップ安から始まる、ということもあり得ます。
通常、値段というのは、基本的にはこの値段だったら買っても良いという人と、この値段じゃないと利益が出ないから売りたくない、という人がいて、お互いが妥協したり駆け引きしたりして、値段が決まり、取引が成立するものですよね。
例を挙げてみましょう。
金の値段が前日、3005円を付けていたとします。
その値段を見て、3000円なら買いたいという人が100人、3010円だったら売りますと言う人が100人いたとします。
これでは、取引は成立しませんよね。
すると3001円で10人、3002円5人、3003円5人、3004円5人、3005円で30人、3006円10人、3007円5人、3008円5人、3009円10人、3010円で15人と売り手側から妥協する人が出てきて、値段が分かれました。
これに対して、買い手側は3001円なら…と50人出てきました。
しかし、3001円は10人しか売り手がいないので、先着10名だけが買うことができ、取引が成立しました。
残った40人は売り手が妥協するのを待ちましたが、出てこないので、3001円で買えなかった残りの40人の中から徐々に妥協する人が増え、順調に3002円で5人、3003円で5人、3004円で5人と決まり始め、3005円で残りの25人も取引を成立させました。
となると、3005円の売り手は30人いますから、5人残ったままです。
すると、3000円で買いたいと沈黙していた50人が乗り遅れてどんどん高くなってしまう!と焦る人が出てきて、3004円ならと15人名乗りをあげ、3005円の5人が3004円に妥協して、取引が成立しました。
残りの10人を狙って、3009円じゃ売れそうにもないな、と思った10人が一気に3004円まで妥協し、その10人も成立。
そこで、売り手の3006円10人が焦り、3003円でも良いと妥協し、3000円で粘っていた買い手の人も妥協し、さらに10人成立。
買い手、売り手それぞれ25人を残したまま、こう着状態が続き、その日の取引の終了時間が近づいて来た所で、3000円で粘っていた25人のうち20人がもう何円でも良いから買いたい!となって、3007円5人、3008円5人、そして、3010円で粘っていた15人のうちの10人までが成立し、タイムアップ。
1日の取引が終了し、時間切れとなってしまい、お互い譲らなかった買い手5人と売り手5人は結局取引が成立なかった、ということになります。
細かい説明ですが、ここでは分かりやすく人数で表しましたが、実際の取引では枚数として表示されます。
もし、金を10枚買っている人が10人いて、100枚売っている人が1人いて、全員が3000円で買いたい、売りたいと注文を出したら、
100枚 3000円 100枚
というように表示されるので、実際の取引では人数は分かりません。
取引されている値段から上にも下にも何円か表示され、それぞれの値段ごとに20枚買い、30枚売りというのが分かるように表示されており、その値段や枚数を見ながら、注文を出し、取引を成立させていくのです。
その値段や注文枚数状況などを「気配値(けはいち)」と言います。
そして、一日の値動きの中で、必ず、「始値(はじまりね)」、「高値」、「安値」、「終値(おわりね)」ができます。
始値を「寄付(よりつき)」と言ったりしますが、つまり、その日の相場が始まった時に一番最初に約定した値段のことです。
高値は取引の中で一番高く約定した値段、安値はその逆、終値は「引け値(ひけね)」と言ったりしますが、この引け値には2つ種類があります。
午前中の相場が終わった時点での終値は「前引け(ぜんびけ)」と言い、その日の相場の最終時に約定した値段のことを「大引け(おおびけ)」と言います。
これが1週間なら月曜日の寄付の値段が始値、金曜日の大引けの値段が終値、月曜日から金曜日の相場中に付けた中で一番高い値段と安い値段が高値、安値となります。
これが月単位なら1日から末日、1年単位なら1月最初の取引日、「大発会(だいはっかい)」から12月最終の取引日、「大納会(だいのうかい)」、ウン十年単位となれば、どうなるかお分かりですね?
また、買いまたは売りの契約をし、取引が成立したとして、その後、未決済(現物引渡しや反対売買が行われていない状態)になっている契約を「建玉(たてぎょく)」と言います。
そして、市場で売買が成立した取引量のことを「出来高(できだか)」と言います。
ここで、注意することは、買い手と売り手それぞれ95人(枚)いましたが、成立した量を言いますので、出来高は190枚ではなく、95枚ということになります。
それと未決済の建玉の量を「取組高(とりくみだか)」と言います。売りと買いが取り組んだ状態を1枚と数えるので、例では、100人(枚)が取組高ということになります。
この取組高は、一種の人気のバロメーターになります。多ければ多いほど、その商品の売買に参加している人が多いということになるからです。
※日経新聞などでは、出来高を「売買高(ばいばいだか)」、取組高をただ「建玉(たてぎょく)」と表記している場合もあります。
このようにして、気配値の買い枚数が増えれば、上がると予想している人が多く、売り枚数が増えれば、下がると予想している人が多いということが一般的には言え、値段が上がったり下がったりしながら取引が常に成立していくことになるのです。
これが、何かしらの大きな要因があって、全員上がる!もしくは下がる!と思った時、買いたいという注文ばかりが出たり、売りたいという注文ばかりが出るとストップ高、ストップ安という状況が出来上がります。
こうなると、いくら取組高が多くても出来高は増えません。
つまり、自分の注文が通らない場合もあるので、リスクへの備えは必要です。
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